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■2002年10月22日
星になった嘘 Vol.2
--M氏のお送りするエッセイ第二弾!
秋の夜長に、ちょっと切なくロマンチックな話をお楽しみ下さい。 |
前回からの続き・・・・
晃は何とも言えない気持ちで胸がつまったと言っていた。
同時にとても恥ずかしかったと言っていた。
彼女はなぜ気づいていながらも騙されているふりをしていた
のか?
しかも、会う約束をしたり、電話で話し続けていたりと。
僕自身も色々と考えて見た。
しかし、僕の予想出来た答えは一つだけだった。
言葉は悪いが軽い女という事…。
「なぜ、騙されたふりをしたんだよ!」
「だって、言う必要なんてないもん!気づいていると言ったらもう話せなくなると思ってたから…」
楽しかった日々の後は寂しい気持ちを覚える。
最高の夜の後は最低の朝を迎える。
晃にとってはきっと、そんな心境だったのかも知れない。
晃は当初、自分が遊び半分で電話の向こうの彼女と話し続けていた気持ちを忘れていた。
と言うよりもこの頃には、その気持ちはもうなくなっていた。
それからしばらく彼女には電話はしなかった。
一方彼女の方は部屋の電話が鳴る度に晃からの電話かな?
という様な思いを募らせていた。
それは同時に苛立ちにも変わって行った。
当然、晃は自分の電話番号を知らせていない。
「もう一人の吉川って男、どんな奴なんだろう…」
晃自身、意地を張りながらもその事が頭を離れる事はなかった。
「別の人だって分かってるって言ったら、もう話せないんじゃないかと思ったから…」
彼女が発した言葉が晃の脳裏を駆け巡る。
自分の電話番号を知るはずのない、彼女からの電話を何処かで期待していた。
「なぜ何だろう?こんな気持ちになるなんて…」
そして晃の意地も時間と共に和らいで行った。
「もしもし…」
意地を維持出来なかった。
騙されていたのは彼女。怒りたいのは彼女。
「吉川君!?吉川君でしょ?あっ!違う、吉川さんでしょ…
待ってた…。待ってたんだから!」
それはまるで喧嘩した後の恋人同士の会話の様になっていた。
「何してた?」
「電話待ってた…」
「ずっと?」
「うん。ずっと…。殆ど外出も出来なかった…」
「俺は別の吉川なんだぜ!?晃って言う男なんだぜ!」
「……。」
胸が詰まっていた。
またこうして話せた事と会話の行方が見えない事とが交差していた。
そして何よりも素直になれないままで。
「晃君ってどんな人なんだろうな。
私、色々と想像しちゃった。
きっと、男っぽい人なんだろうなぁ〜とか。
でも、私達って何なんだろうね…」
「知るかよっ!そんな事…」
「でもこれって運命だと思わない?晃君。でもね、会った事もない人なのになぜか、話しているとホッとするの。」
「お前、本当にそんな風に思ってるの?」
晃は荒んでいた心に突然、矢が刺さった様な気持ちだった。
「運命なんて予定調和を大袈裟に解釈したものさ」
今までの晃ならそんな風に思っていただろう。
晃にとって、彼女が発する言葉、ひとつひとつが、
「探していた微笑みに出会いたいのなら一度、自分を脱ぎ捨ててごらんっ!」
いつもそう心に届いていた。
はじめて晃が自分を口にした。
「俺、夢があるんだ…」
「やっと、話してくれたぁ〜
晃君って自分の事を話してくれないんだもん!」
「そんな誰にでも簡単に自分の事を話せる訳ないだろっ!」
「私には話してくれるの?私は知りたいって思ってるけど…」
「……。」
「でも、お前の事を知らないから逆に話せるのかもな。」
晃は本当の吉川と言う男の事、いや別の吉川という男の事を少なくとも今は忘れて欲しいそんな気持ちでいた。
「私は最初からそうだったよ。ずっと、そう思っていたよ。晃君と話しているって。」
二人にとってきっかけはどうでもよくなっていた。
そう軽いナンパ程度に話していた別の吉川。
それを分かっていながらも話し続けていた彼女。
「今度こそ会いたいなぁ〜 晃君とね。」
「そうだな。会いたいな。」
その後、次第にお互いに電話をするようになり、
互いに思いを寄せて行った。
しかし、その後も二人が会う事はなかった。
「このまま会わない方がいいんだ。
顔も知らない俺達が分かり合えたんだぜ?」
「そんなの嫌だよっ!せっかく知りあえたのに…素直になれたのに…」
晃は、その時熱い気持ちでいた事も思い出していた。
カウンター越しのバーテンもこの話に聞き入っている。
「すいません、もう一杯!」
ついつい興奮気味で話していた。僕もなぜか落ち着かなかった。
乾いた喉をバーボンで潤している。
また、思い出を語り始めた。
(次回へ続く...)
(M)
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