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■2002年10月29日
星になった嘘 Vol.3
--M氏のお送りするエッセイ第二弾!
秋の夜長に、ちょっと切なくロマンチックな話をお楽しみ下さい。
前回からの続き・・・・

「会うのが怖かったんだよね、
なぜか夢から覚めるようでさ…」

僕には何となく分かるような気がしてた。

「だから、理想云々という問題でななくさ、その時の気持ちを大事にしたかったんだよね、きっと。」

理由なんていらない。大切なのは今の気持ち。
そう僕には聞こえていた。

ふと気づけば、店内の灯のせいなのか、晃の目が潤んでいるように見えた。

振り返り過ぎた晃。先を急ぎ過ぎた彼女。

「彼女にして見れば俺は勝手だよね。
俺はこういう人間なんだ!なんて話していながら、それでいて会えないなんてさ…」

僕はこの話について初めて言葉を口にした。

「でも、変な話さ、いつもの晃のノリだったらさ、絶対会っているはずだよな?
普段のお前だったら、絶対、口説いてるよな。
でも、夢から覚めるようで怖かったってのは晃らしいかもな。
お前は夢に生きてるんじゃなくて夢で生きてるんだもんな(笑)」

「お前に言われたくないってばっ!」

晃は良くも悪くも自分に嘘をつけない性格。その分、よく誤解されている。
僕はそんな晃が羨ましかったりする。

「晃君の夢って何なの?良かったら教えてよ。」

「良かったら?じゃぁ、教えない。」

「捻くれ者だなぁ〜晃君は(笑)」

「ホっといてくれっ!」

「その晃君ってやめてくれない?」

「じゃあ、何て呼んでいいの私?」

「勝手にしろよ。」

「晃って呼んだら、教えてくれる?晃君の夢…」

「極端な奴だなぁ〜お前は。」

そんな会話も思い出している。

「そんな会話をしている時が、一番楽しかったかもね…」

確かに僕自身、普段の晃を知っているだけに、その想像も出来ない程の晃の笑顔があったのかも知れない。
最近の晃は疲れているようにも見えたし。

「誰もが世の中と並走していないと不安にさせられるようなシステムだしさ。 東京なんてコンクリートジャングルだしね。
みんな笑っていても笑顔がどこか引きつって見えるよ。
俺さ、夜空をボーッと見上げているのが好きなんだよね。
星は希望と失望をくれ、月はロマンスをくれる。
そして、雨は昨日までの自分を流してくれる。
風はその一日の行く宛のない微熱をさらってくれるんだ。」

「何か今の話を聞いただけで、晃君がどんな人か分かっちゃったもんねっ!」

「変な奴…」

「私も晃君と一緒だね!」

「一緒にするなぁ〜」

その晩の会話が二人にとって最後の会話になった。
心だけで通じ合えた二人にいたく感動を覚えこの話をしてくれた
晃にお礼を言いたいくらいの気持ちになっていた。

その後、しばらくは沈黙の日が続いた。
数ヶ月後、彼女の笑顔が見たいと言う気持ちが晃の中で抑えきれなくなる。
そして、受話器をとっていた。

「もしもし?」

「はい…」

「吉川ですけど…」

いつもは彼女が出ていた電話。聞きなれない声に少々戸惑って
いた。

「あっ、もしかして晃君ですか?」

「はい…」

「うちの子に話は聞いてますよ…」

「えっ!?」

「どうしても会いたかった人がいたって…」

「えっ?彼女は?」

彼女は、ずっと難病と戦っていた。入退院を繰り返していた。
そんな中での唯一の楽しみが晃と電話で話す事、いつの日か会えるとを信じていた事。

「うちの子の日記に、晃君の名前がいっぱい出て来ていたんです。今日も晃君から電話があった…とか、いつか会えるかな…って。」

「……。」

最後のページに滲んだ文字でこう書きつづってあった。

「晃君?晃君、夜空を見上げるのが好きだって私に教えてくれたよね。
きっとね、見上げた夜空に星が見えたら、
その星はきっと私だよ…」